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AIはアメリカだけの話じゃない! ― 味の素も担う、日本企業とAI産業の世界地図

カテゴリー: AI時代の未来理解プログラム

公開日:2026.10.07 / 更新日:2026.10.07

AIは、一つの会社が作っているわけではない

AI時代の世界地図イメージ

前回の記事では、世界の大手テック企業がAI関連の設備やデータセンターなどに巨額の投資を続けていることを紹介しました。では、こうした巨額のお金は、いったいどこへ流れているのでしょうか。

前回の記事はこちら:世界がAIに「本気で」投資する理由とは? ― 116兆円が動く、AI覇権争いの現在地

「AIを作っているのは、どこの会社ですか?」

そう聞かれたら、「ChatGPTのOpenAI」「Google」「Microsoft」などを思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、これらの企業はAIの発展を牽引する重要な存在です。

しかし、AIは一つの会社だけで作れるものではありません。

AIを動かすための半導体、その半導体を作るための製造装置や素材、膨大な計算を処理するデータセンター、それらをつなぐ通信網、さらに電力まで、多くの企業や産業が関わっています。

つまりAI産業を見るときには、「AIを作っている会社」だけを見るのではなく、その周辺にどんな企業や技術が存在しているのかを見ることが重要です。

「作る」「支える」「使う」――AI産業を3つに分けて理解する

AI産業を大きく分けると、次の3つの層で考えることができます。

AI産業を「作る」「支える」「使う」の3つの層に分けた図

  • 作る:AIモデルやAIサービスを開発する
  • 支える:半導体、素材、製造装置、通信、データセンターなどを提供する
  • 使う:AIを学校、病院、工場、物流、企業、日常生活などで活用する

私たちが普段目にするのは、「作る」側の企業や「使う」側のサービスです。一方で、その間には非常に多くの企業が存在しています。AIがどのように動いているのかを理解するには、この「支える」層まで含めて見ることが大切です。

AIを一つのサービスとして見るのではなく、そのサービスが生まれ、動き、社会で使われるまでの流れを見る。そうすると、これまでAIとは無関係に見えていた企業や仕事が、実はAI産業とつながっていることに気づきます。

「AIを作る」企業たち

まずは、私たちが比較的イメージしやすい「AIモデルやAIサービスを開発する企業」です。

AIモデルやAIサービスを開発する企業のイメージ

OpenAI

ChatGPTを開発しているOpenAIは、生成AIを代表する企業の一つです。GPTシリーズなどのAIモデルを開発し、文章の生成や画像の理解、プログラミングなど、さまざまな用途にAIを活用できるサービスを提供しています。

Google DeepMind

GoogleのAI研究部門であるGoogle DeepMindも、AI研究を世界的にリードする存在です。検索や翻訳、科学・医療分野など、Googleが持つさまざまなサービスや研究にAIが活用されています。

Meta AI

FacebookやInstagramを運営するMetaも、AIへの投資を続けています。SNSの推薦や広告だけでなく、生成AIやARなど、さまざまなサービスや技術にAIを活用しています。

このほかにも、Anthropicなど多くの企業がAIモデルの開発を進めています。

ただし、ここで一つ重要なことがあります。こうした企業がAIモデルやサービスを開発できるのは、その下に巨大な半導体産業やデータセンター、通信インフラなどが存在しているからです。

AIはソフトウェアだけで動いているわけではありません。膨大な計算を処理するためのハードウェアと、それを安定して動かすためのインフラがあって初めて、私たちはAIサービスを利用することができます。


AIを「支える」企業たち

ここからが、今回ぜひ知っておきたい部分です。

AI産業を支えているのは、AIモデルを開発する企業だけではありません。その土台には、半導体やデータセンター、通信など、さまざまな分野の企業が存在しています。

AIを支える半導体・通信・データセンター企業のイメージ

NVIDIA

代表的なのがNVIDIAです。

NVIDIAは、AIの学習や推論に使われるGPUを開発する半導体企業です。生成AIの普及によってAI計算に必要なGPUへの需要が拡大し、現在のAI産業を理解するうえで重要な企業の一つとなっています。

TSMC

そして、そのNVIDIAなどが設計した半導体を実際に製造するのが、台湾のTSMCです。

高度なAI向け半導体は、設計だけでは完成しません。微細な回路を形成するための高度な製造技術と設備が必要になります。

ソフトバンク

日本では、ソフトバンク株式会社もAIインフラの整備を進めています。GPUを利用したAI計算基盤やAIデータセンター向けのサービスなどを通じて、AIを実際に動かすための環境づくりに取り組んでいます。

※前回の記事で紹介した、OpenAIへの投資を手がけるソフトバンクグループ株式会社とは、同じグループ内の別会社です。

NTT

通信インフラの面では、NTTグループも重要な役割を担っています。

NTTが進めるIOWNなどの光通信技術は、大量のデータを高速にやり取りする環境や、AIを活用するデータセンターなどとも関係しています。

ここまで見てくると、AI産業は「AIを作る会社」だけでは成立しないことが分かります。

AIは、半導体、素材、製造装置、データセンター、通信など、さまざまな産業がつながって成り立っています。

そして、この「支える」層には、もう一社、多くの方が意外に感じるであろう日本企業が関わっています。


「味の素」がAIを支えている?

「AIと味の素に何の関係があるの?」

そう思う方がほとんどだと思います。

味の素のABFが半導体を支えていることを示すイメージ

味の素の主力商品といえば、もちろん調味料です。しかし同社には、食品事業とは別に、半導体関連材料という事業があります。

その一つが、半導体パッケージ基板に使われる「ABF(Ajinomoto Build-up Film)」という絶縁材料です。ABFは、半導体パッケージの基板内部にある配線を絶縁するために使われ、高性能コンピューターやデータセンター向けサーバーなどに使われるFC-BGAにも採用されています。

味の素は、このABFについて「全世界の主要なパソコンのほぼ100%のシェアに達している」と説明しています。つまり、生成AIを動かすAIサーバーなどで使われる高性能半導体。その半導体パッケージにも、日本企業が開発した材料が使われているということです。

出典:味の素株式会社「ABF(味の素ビルドアップフィルム)」(2026年10月時点)

「食品会社」だと思っていた企業が、半導体産業でも重要な材料を提供している。

こうしたつながりを知ると、AI産業の見え方が大きく変わってきます。普段使っているAIサービスの裏側をたどっていくと、そこには私たちがよく知っている日本企業や、名前は知らなくても世界の半導体産業で重要な役割を担っている企業が存在しています。

まだまだいる、日本の「縁の下の主役」

味の素だけではありません。日本には、半導体産業の中で重要な役割を担っている企業が数多くあります。

半導体産業を支える日本企業のイメージ

  • 信越化学工業:半導体に使われるシリコンウエハーなどを提供
  • 東京エレクトロン:半導体を製造するための装置を提供
  • SCREENホールディングス:半導体製造に使われる洗浄装置などを提供
  • レーザーテック:半導体製造に使われる検査装置などを提供

※各社の事業内容は、2026年10月時点で公表されている情報に基づいています。

これらの企業は、一般消費者向けの商品を販売しているわけではありません。そのため、名前を聞いたことがない企業も多いかもしれません。

しかし、半導体はAIをはじめ、スマートフォン、自動車、コンピューターなど、現在のさまざまな技術を支える重要な部品です。そして、その半導体を作るためには、材料や製造装置、検査装置など、さらに多くの技術が必要になります。

AIの進化によって高性能な半導体への需要が高まれば、その製造を支える企業にも新たな技術や製品が求められることになります。

日本企業の強みの一つは、AIそのものではなく、その手前にある「支える層」にもあります。

「地図」を持っている人と、持っていない人

ここまでの話を、もう一度つなげてみましょう。
OpenAIなどがAIモデルを開発する。そのAIを動かすためにNVIDIAなどのGPUが使われる。AI向け半導体はTSMCなどで製造され、その製造工程には日本企業を含むさまざまな素材・製造装置メーカーが関わっています。

このように点と点をつないでいくと、AI産業全体の「地図」が見えてきます。

AI産業全体のつながりを示す地図のイメージ

地図を持っていると、「AIといえばOpenAIやNVIDIA」というところで終わりません。「この会社はAIモデルを開発している」「この会社はAI計算に必要な半導体を提供している」「この会社は半導体を作るための材料や装置を提供している」と、それぞれの役割を理解できるようになります。

一方で、地図を持っていなければ、AIは「なんだか難しい技術」「海外の巨大企業がやっているもの」というところで話が終わってしまいます。

子どもの将来を考えるとき、この違いは意外と大きいのではないでしょうか。

AIエンジニアになるか、ならないか。そんな二択だけで考える必要はありません。AIモデルを作る仕事もあれば、AIを支える半導体や通信に関わる仕事もあります。AIを使ってサービスを作る仕事もあれば、AIを自分の仕事に組み込む仕事もあります。

子どもの将来の選択肢を考えるためには、まず「世の中がどうつながっているのか」を知ることが大切です。

AI産業を支える、日本企業の存在

AI時代を生きる子どものイメージ

ここまで見てくると、AI産業を「アメリカの巨大テック企業だけの世界」と考える必要はないことが分かります。

もちろん、ChatGPTのような世界規模のAIサービスや基盤モデルという分野では、米国企業が大きな存在感を持っています。一方で、半導体材料、製造装置、検査装置、通信など、AIを動かすために欠かせない分野には、日本企業も数多く関わっています。

大切なのは、「日本はAIで勝っている」「日本はAIで遅れている」と単純に考えることではありません。AI産業をいくつかの層に分けて見てみると、それぞれの分野で異なる企業や技術が関わっていることが分かります。

今回の記事で覚えておきたいのは、次の3点です。

  • AI産業は「作る・支える・使う」という複数の層で成り立っている
  • 日本企業も、半導体材料、製造装置、通信など、AIを支えるさまざまな分野に関わっている
  • 産業全体のつながりを知ることで、AIに関わる仕事や企業の見え方が変わる

第1回では、AIによって社会の構造そのものが変わり始めていることを紹介しました。第2回では、世界の企業がなぜAIに巨額の投資を続けているのか、「お金の流れ」という視点から見てきました。そして今回は、そのお金が向かう先を「企業と産業のつながり」という視点から見てきました。

AIは、一部の巨大テック企業だけの話ではありません。

私たちが普段目にしているAIサービスの裏側には、半導体、素材、製造装置、通信など、さまざまな産業がつながっています。


そして次回は、もう一歩、子どもの未来に近づいてみます。

AIによって、これから仕事はどう変わるのでしょうか。なくなる仕事、残る仕事。そして、これから子どもたちに求められる能力とは何なのか。「AIを使えるようになる」という話だけでは見えてこない、10年後の仕事について考えていきます。

※本記事は、AI産業の構造を解説することを目的としたものであり、特定の企業や投資を推奨するものではありません。記載内容は2026年10月時点で公表されている情報に基づいています。

連載:AI時代の未来理解プログラム〜わが子の10年後を考える〜

本記事は、全6回シリーズ「AI時代の未来理解プログラム ― わが子の10年後を考える」の第3回です。
お子さんが社会に出る10年後、世界はどう変わっているのか・・・。
AIが変えていく社会の姿と今からできる備えについて、一緒に考えていきませんか?

シリーズ目次:
第一回:2035年、AIが変える世界を生きるわが子のために ― 今、保護者が知っておくべきこと
第二回:世界がAIに「本気で」投資する理由とは? ― 116兆円が動く、AI覇権争いの現在地
第三回:AIはアメリカだけの話じゃない! ― 味の素も担う、日本企業とAI産業の世界地図
第四回:同じ「正社員」でも生涯賃金2億円の差!? ― AI時代にわが子の将来収入を左右する分かれ道(準備中)

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公開日:2026.10.07 / 更新日:2026.10.07