10年後、わが子が選ぶのは「今はない仕事」かもしれない ― AI時代に、親ができる備えとは?
カテゴリー: AI時代の未来理解プログラム
「この子の将来、大丈夫かな」― その気持ちは、とても自然なものです
AIのニュースを見るたびに、ふと考えてしまうことはありませんか。
「この子が大人になるころ、どんな仕事があるんだろう」
「今の勉強だけで、本当に大丈夫なのかな」
そんな気持ちになるのは、お子さんの将来を真剣に考えているからこそです。決して心配しすぎではありません。
前回までの記事では、世界中の企業がAIに大きな投資を続けていること、そしてAIを支える産業には日本企業も深く関わっていることをお伝えしてきました。
前回の記事はこちら:AIはアメリカだけの話じゃない! ― 味の素も担う、日本企業とAI産業の世界地図
今回は、そうした変化が「わが子の仕事」とどうつながっていくのかを、一緒に考えてみたいと思います。
先にお伝えしておきますね。この記事の結論は、「今から少しずつ準備していけば、大丈夫」です。
20年前にはなかった仕事が、今はたくさんあります
少しだけ、時間をさかのぼってみましょう。
iPhoneが日本で発売されたのは2008年のことです。それより前には、スマホのアプリを作る仕事はほとんどありませんでした。今では、買い物も、地図も、学校の連絡も、たくさんのサービスがアプリで動いていて、それを作る人たちが大勢活躍しています。
ほかにも、たくさんのデータから役に立つ答えを見つけ出す「データサイエンティスト」、SNSを使ってお店や商品の魅力を伝える仕事、動画を通じて情報を届ける仕事。どれも、20年前にはほとんど知られていなかった仕事です。
働き方も変わりました。数年前までは、会社に行かずに家で仕事をする「リモートワーク」は、ごく一部の人のものでした。今では、多くの人にとって当たり前の選択肢の一つになっています。
私たち親世代が子どものころ、こうした仕事や働き方を想像できた人は、ほとんどいなかったのではないでしょうか。
新しい技術が生まれると、それに合わせて、新しい仕事や働き方が生まれる。これは、これまで何度も繰り返されてきたことです。
これからの10年で、新しい仕事はもっと増えていきます
そして今、その「新しい技術」の中心にあるのがAIです。
AIは、決まった手順の作業や、たくさんのデータから答えを探すことがとても得意です。その一方で、人にしかできないことも、たくさん残っています。
AIが得意なこと
- 決まったルールに沿った繰り返し作業
- 大量のデータから答えを探すこと
- 決まった型に沿った文書づくり
人にしかできないこと
- 人との信頼関係を築くこと
- 「なぜ?」と問い続けること
- 自分の言葉で考えを伝えること
- 思いがけない状況で判断すること
これから起きるのは、「仕事がなくなる」という単純な話ではありません。多くの仕事で、その中身が変わっていくのです。AIに任せられる部分はAIに任せて、人は人にしかできないことに力を注ぐ。そんな働き方が広がっていきます。
国の見通しも見てみましょう
経済産業省の「2040年の就業構造推計」では、国内への投資や産業の転換が十分に進んだ場合の試算として、2040年にはAIやロボットを活用できる人材がおよそ340万人不足するという見通しが示されています。
言い換えれば、AIを上手に使える人が活躍できる場は、これからもっと広がっていくということです。
出典:経済産業省「2040年の就業構造推計」。一定の前提を置いた試算であり、将来を確定するものではありません。
そして、スマホのアプリを作る仕事がそうだったように、10年後には「今はまだ名前もない仕事」がきっと生まれています。お子さんは、そうした新しい仕事を選べる世代でもあるのです。
同じ正社員でも、どこで働くかで見える景色は変わります
ここで、少しだけ現実的なお話もしておきます。
同じ「正社員」という働き方でも、働く業界によって、お給料には違いがあります。
業界別の月給の目安(正社員)
- 電気・ガス・熱供給・水道業:約45万円
- 金融業、保険業:約44万円
- 情報通信業:約41万円
- 卸売業、小売業:約37万円
- 全体の平均:約36万円
- 製造業:約35万円
- サービス業(他に分類されないもの):約31万円
- 宿泊業、飲食サービス業:約30万円
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」。一般労働者のうち正社員・正職員の所定内給与額(月額。賞与や残業代は含みません)。業界ごとの平均値で、年齢構成などの違いも影響しています。
ただ、どうしてもお伝えしておきたいことがあります。
この違いは、働く人のがんばりや能力の違いではありません。
飲食店でお客さまを笑顔にしている人も、お店で一人ひとりに丁寧に接客している人も、私たちの暮らしになくてはならない存在です。仕事の価値が、お給料の数字で決まるわけではありません。
この違いには、それぞれの業界の仕組みや働く人の年齢層などが関係しています。
ここで大切なのは、「お給料が高い業界を選びなさい」ということではありません。世の中にはたくさんの仕事や業界があり、それぞれに違いがあることを、知っておくことです。知っていれば、お子さんが進路を考えるときに、選べる道が増えます。
「何になるか」より、「どんな力を持っているか」
10年後にどんな仕事が生まれるのかは、誰にもわかりません。だからこそ、「この職業を目指しなさい」と決めてしまうのは、少しもったいないかもしれません。
それよりも大切なのは、どんな仕事に就いても役に立つ力を育てておくことです。
- 何が課題なのかを、自分で見つける力
- 情報を集めて、正しく見極める力
- 自分の考えを言葉にして、人に伝える力
- 人と協力して、新しいものを生み出す力
「うちの子は文系だから、AIは関係ないかな」と感じた方もいるかもしれません。でも、こうして並べてみると、文系の学びで育つ力もたくさん含まれていることに気づきます。
AIの時代に大切なのは、「理系か文系か」ではありません。どの道に進んでも必要になる、考え方の土台なのです。
備えるために大切な、「AI」と「情報活用」の学び
では、その土台は、どうやって育てていけばいいのでしょうか。
これからの時代、AIはスマホやインターネットと同じように、暮らしや仕事の中で当たり前に使われる道具になっていきます。だからこそ、子どものうちに身につけておきたいのが、AIと上手に付き合う力と、情報を正しく扱う力です。
たとえば、こんな力です。
- AIの答えをそのまま信じるのではなく、「本当かな?」と確かめる力
- AIに任せる部分と、自分で考える部分を分けられる力
- たくさんの情報の中から、必要なものを選び取る力
学校でも、高校の「情報Ⅰ」が必修になるなど、情報について学ぶ機会は増えてきています。それに加えて、AIや情報を「実際に使ってみる」経験を重ねることで、こうした力は少しずつ、確かなものになっていきます。
大切なのは、AIの使い方を早く覚えることではありません。新しい道具が登場しても、落ち着いて向き合い、自分の頭で考えて使いこなせること。その経験の積み重ねが、10年後に新しい仕事が生まれたときの「選べる力」につながっていきます。
今日からできる、小さな一歩
特別なことを始める必要はありません。たとえば、こんなことから試してみてはいかがでしょうか。
- 「将来なりたい職業」ではなく、「やってみたいこと」を聞いてみる
- 一緒にニュースを見たとき、「この会社って何をしているんだろうね」と話してみる
- お子さんが好きなことの分野で、AIがどう使われているか、一緒に調べてみる
こうした何気ない会話が、お子さんの中に「世の中を見る地図」を少しずつ育てていきます。
まとめ ― 今から少しずつ準備すれば、大丈夫です
今回お伝えしたかったのは、次の3つです。
- 新しい技術が生まれるたびに、新しい仕事や働き方が生まれてきた。AI時代の10年で、それはさらに増えていくこと
- 大切なのは「何になるか」を早く決めることではなく、どんな仕事にも通じる力を育てておくこと
- そのために、AIと上手に付き合う力、情報を正しく扱う力を、子どものうちから少しずつ育てていくこと
未来のことは、誰にも正確にはわかりません。でも、変化に向き合う力は、今から育てることができます。
お子さんの将来を、親が決めることはできません。でも、お子さんが自分で選べるように、その土台を一緒につくってあげることはできます。
焦る必要はありません。今から少しずつ準備していけば、大丈夫です。
次回は、ここまで何度も登場してきた「AI」そのものに目を向けます。
AIはどうやって動いているのか。難しく聞こえるそのしくみを、できるだけやさしく、身近な例えでお話しします。
※本記事のデータは、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」、経済産業省「2040年の就業構造推計」に基づいています。記載内容は2026年10月時点の情報です。

連載:AI時代の未来理解プログラム〜わが子の10年後を考える〜
本記事は、全6回シリーズ「AI時代の未来理解プログラム ― わが子の10年後を考える」の第4回です。
お子さんが社会に出る10年後、世界はどう変わっているのか・・・。
AIが変えていく社会の姿と今からできる備えについて、一緒に考えていきませんか?
シリーズ目次:
第一回:2035年、AIが変える世界を生きるわが子のために ― 今、保護者が知っておくべきこと
第二回:世界がAIに「本気で」投資する理由とは? ― 116兆円が動く、AI覇権争いの現在地
第三回:AIはアメリカだけの話じゃない! ― 味の素も担う、日本企業とAI産業の世界地図
第四回:10年後、わが子が選ぶのは「今はない仕事」かもしれない ― AI時代に、親ができる備えとは?
第五回:AIの「しくみ」を知っている子は、なぜ強いのか ― 難しい話を、いちばんやさしく(準備中)
ここまで読んでくださったあなたへ
この記事を書いている私たちは、「スターAI・情報塾」と、その母体である「スタープログラミングスクール」を運営しています。
スタープログラミングスクールは、全国87教室でプログラミングの基礎を教えてきました。そして、その学びの先にある「AI・情報活用」という新しいステージとして生まれたのが、スターAI・情報塾です。
「うちの子には、まだ早いかもしれない」「まずは基礎から」という方も、「もっと踏み込んで、AIや情報活用まで学ばせたい」という方も、それぞれの学びの入口をご用意しています。











